魔法科高校の劣等生

続・魔法科高校の劣等生は予想通りにレゴ・ブロックだった

「魔法科高校の劣等生」は第32巻で終わりました。なんと作者は感動して、後書きをかけなかったそうです。

2020年10月10日に発売された続・魔法科高校の劣等生メイジアン・カンパニーを実際に読んでみて、ようやく理由を理解できた気がします。

どうやら前回の予想は半ば当たっており、続・魔法科高校の劣等生はレゴブロックのようなものだと分かりました。

(ちなみにお嬢様は、「『魔法科高校の劣等生』の第一巻と同じポーズの表紙!」とお気づきになりました。見事です)

続・魔法科高校の劣等生・メイジアン・カンパニーのテーマさて著者の佐島勉氏も無事に復活して、かなり続編の概要が分かって来ました。 かなり私の想像とは違っていましたが、やはり当初構想からは...

今回はどうしてレゴのようであるのかを、あらすじに触れながら解説させて頂くことにします。

作者が感動した理由

まず続・魔法科高校の劣等生メイジアン・カンパニーを読んで感じたのは、「魔法科高校の劣等生」が第32巻で終わったことです。

「すぐに続編が出るから、終わったとは言い切れないのでは?」というのは、私の見識が浅かったです。たしかに作者が感動するハズです。

いったい何が言いたいかというと、「司波達也を主人公として展開されていた物語は終わった」です。だから同じ登場人物たちが活躍しているとはいえ、メイジアン・カンパニーという作品は、前作とは全く別な物語となっています。

これは作者自身が後書きで解説しています。メイジアン・カンパニーでは、三人の主人公を中心にストーリーを展開する予定とのことです。新たな登場人物も顔を出します。これは確か予告編でも紹介されていましたね。

ちなみに興味のある方は、電撃文庫の公式サイトで無料の試し読みが出来ます。第1巻の1/4近くが掲載されています。

ただし無料の試し読み部分では、残念ながら作者の心境は理解できません。それでも司波達也が大学三年生になっていることは分かります。

まあ相変わらず、忙しい人生を送っていますね。

あと察しの良い方であれば、この冒頭部分だけで大体の展開が分かるかもしれません。殆どお約束通りの展開になっています。

まあそうは言っても、第一巻は登場人物たちの近況紹介や、物語を展開させるための伏線が殆どです。あまり話は殆ど動きません。司波達也暗殺計画とは対照的です。

これはベストセラー作家の百田尚樹氏が雑談力(販売部数は20万部)で述べた、「ぼくは最初の1ページ目から物語を動かす。大半の売れっ子作家も同様だ」というアプローチとは真逆ですね。それでも思わず読ませてしまうあたりが、さすがは「魔法科高校の劣等生の作者」といったところでしょうか。

レゴ・ブロックだという理由

さて先ほど紹介したように、続・魔法科高校の劣等生メイジアン・カンパニーでは、主人公は三人になります。続編がどこまで人気作となれるか分からないから、まあ最初は複数主人公で始めるのは無難な方法かと思います。

ガンダム・シードDestinyといった有名アニメや、ドラゴン・ボールといった超人気マンガでも、作者の意図に関わらず主人公が続投するように路線変更されました。そういう事例を踏まえると、実に賢明なアプローチです。

そして冒頭で紹介した予想記事のように、主人公は前作で究極まで行き着いてしまいます。私の期待に反して宇宙人は登場しないので、今回は地上規模の小さな小規模紛争を扱うことになります。

だからまず魔王の司波達也は主人公の一人という形にならざるを得ず、残り二人の主人公に動いて貰うことになる訳です。彼らが期待以上の人気を集めてくれれば、続編としては大成功となります。残念ながら司波達也が主人公を一人で担うことになっても、それはそれで秀作となるでしょう。

さすがは元エンジニアです。小説という文芸作品というよりも、高機能デバイスのような感じです。それぞれの登場人物たちの動作も緻密に計算されており、整然と物語が展開されます。

作者は成人向けの展開は期待しないでくれと述解していますが、本当に心情描写というものがありません。主人公の成長ストリーもないし、登場人物たちの葛藤を描く話もありません。この真逆の路線が、「鬼滅の刃」というところでしょうか。

今回はミステリーのような謎解き要素もありません。第1巻の半ばで、最終目的もアッサリと明かされています。だからあくまでSFのように、描写の見事さ等を武器に勝負をしています。だから「本物の自動車並みの大きさで緻密さと美しさを表現したレゴ・ブロック」なのです。

(ちなみに最終目標は、恒星炉を扱う新会社の社員発掘&育成です。なんか現実社会でも、最近は同じような企画を見かけるようなことがあります)

これはこれで、ある種の究極だとも言えるでしょう。ストーリー重視に振り切っています。第一巻の頃とは時代も変わっており、文体も読みやすいスタイルに変わっています。

はじめて目を通してみたのが第2巻でしたけれども、あの頃とは雲泥の差です。最初のうちはSFやミステリーのような要素を活用していましたけれども、今は計算しつくされた「読みやすさ」が表に出ています。

ちなみに続・魔法科高校の劣等生メイジアン・カンパニーは、SF的な要素よりもオカルト的な要素を増やす考えがあるとのことです。「なるほど、宇宙人ではなくて、オカルトと来たか」という塩梅です。

なお主人公とヒロインの関係は、殆ど進展させていません。これから進展させるつもりの無いらしいです。ここら辺は、他のラノベとは完全に異なる部分と言えるでしょうか。

と、いう訳で、もはや無敵の主人公とは異なり、欠点を抱えながら頑張る新主人公たち2名が活躍する予定です。そうやってみると今まで登場した魔法師たちよりも、メイジアンとかBS魔法師たちの方が主人公に似合っています。

これを経営者目線で見ると、やはり電撃文庫No.2の座をガッチリと長年キープしているのは伊達じゃないと感心させられます。

まとめ

という訳で、さらに磨きのかかった作者の描写力や構想力のおかげで、続・魔法科高校の劣等生メイジアン・カンパニーは、見事なレゴ・ブロックであるような感動を覚えました。

ただ少しだけ意地悪な見方をすると、電源文庫の方が相当大変みたいです。10月の新刊を見ると、半分くらいが新作です。

本当に新作紹介を見ると、ソードアート・オンラインや魔法科高校の劣等生と似たような作品群で溢れています。電撃文庫の三本柱に続く作品を育てたいけれども、なかなか先行きは厳しそうです。

かといって女性にも人気の文豪ストレイドッグスや少年陰陽師の路線は、同じKADOKAWAのビーンズ文庫が担っています。おいそれとは手が出せません。

そういう意味で続・魔法科高校の劣等生メイジアン・カンパニーなどは、成長した既存読者たちの継続確保も図っている訳です。

ある意味で三本柱と新作との人気争いも興味深いです。そういう別な意味でも、目が離せません。

ともかく引き続き物語として続く登場人物たちと作者の活躍からは、当分は目が離せそうにありません。

それでは今回は、この辺で。ではまた。

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記事作成:よつばせい